スペインのビザ・滞在許可
非営利ビザ(NLV)Q&A 9問
働かずに貯蓄で暮らす人向けの非営利ビザ。取得しやすい一方、サッカー移住には重大な落とし穴があります。
制度の基本
非営利ビザ(NLV)とはどんなビザですか?
スペインで一切働かないことを条件に、十分な資金があれば発給される長期滞在ビザです。年金生活者や貯蓄で生活する人を想定した制度で、家族の帯同も可能です。
資金要件は本人が年間約28,800ユーロ、扶養家族1人につき約7,200ユーロの加算(いずれも2026年目安)で、3人家族なら年間約43,200ユーロ(約700万円強)の資金証明が必要です。
「就労禁止」とはどこまで禁止なのですか?
スペイン国内での就労だけでなく、リモートワークを含むあらゆる労働が禁止と解釈されています。「日本の仕事をこっそりリモートで続ける」のはビザの条件違反であり、更新拒否や取消のリスクがあります。
リモートワークをしながら滞在したいなら、それを正面から認めるデジタルノマドビザが正しい選択です。
NLVのメリットはどこにありますか?
収入(フロー)ではなく資産(ストック)で要件を満たせる点です。退職金や貯蓄が十分にあり、当面働く必要がない家族には取得しやすいビザです。子どもの就学や家族帯同も可能で、「生活の拠点をスペインに移す」こと自体はNLVでも実現できます。
ただし、後述のとおりサッカー目的の移住とは相性の悪さがあるため、目的に照らした選択が必要です。
サッカー移住との相性
NLVで移住すれば子どもは選手登録できますか?
極めて不利です。FIFAの「親の移住」例外(第19条2項a)の審査では親の就労実態が重要な考慮要素になりますが、NLVは就労しないことが条件のビザです。実際、親が就労許可を持っていなかったことを理由に登録申請が却下された事例があります。
「取得しやすいからNLVで」という安易な設計は、移住後に子どもが公式戦に出られないという最悪の結果につながりかねません。選手登録を視野に入れるなら、就労実態を示せる滞在資格(DNV等)を軸に設計すべきです。
NLVで入国してから就労できるビザに切り替えられますか?
制度上、一定期間の居住後に就労可能な許可への変更(modificación)を申請するルートは存在します。ただし時間がかかり、その間の就労は禁止のままです。また「最初から働くつもりだったのでは」という整合性の問題も残ります。
切替を前提にした計画は不確実性が高いため、最初から目的に合ったビザを取る方が結果的に早く確実です。
それでもNLVが向いているのはどんな家族ですか?
(1)子どもの選手登録を急がず、まず1〜2年の生活・教育移住として様子を見たい、(2)親が当面働かなくても十分な資産がある、(3)子どもが小さく、公式戦出場が現実的な論点になるまで時間がある、といった家族です。
その場合も、将来登録を目指す時点での滞在資格・就労実態をどう作るかは、あらかじめ専門家と設計しておくべきです。
申請の実務
NLVの必要書類と申請の流れは?
主な書類は、(1)資金証明(預金残高・収入源の証明)、(2)民間医療保険(自己負担ゼロ型・スペインで有効)、(3)無犯罪証明書(アポスティーユ+西語翻訳)、(4)健康診断書、(5)滞在先の情報です。日本のスペイン大使館・領事館で申請し、審査には2〜4ヶ月かかるのが一般的です。
発給後はスペイン入国から一定期間内にTIE(外国人身分証)の取得が必要です。
NLVの更新条件はどうなっていますか?
初回は1年、更新で2年+2年と延長でき、更新時にも資金要件(更新期間分)と実際にスペインに居住している実態(年間183日以上が目安)が確認されます。
スペインにほとんど住んでいないと更新できないため、「ビザだけ持って日本で生活」という使い方はできません。
資金証明はどの程度厳しく見られますか?
残高だけでなく、資金の出所や安定性も見られます。直近だけ一時的に資金を移して残高を作った形跡は不利に働きます。安定した貯蓄・資産運用収入・年金など、継続性を説明できる形で準備してください。
為替変動でユーロ建て要件を割り込まないよう、余裕を持った金額設計も実務上のポイントです。
ご注意
ビザの要件・金額は頻繁に改正されます。本内容は2026年時点の公開情報の整理であり、申請時は必ずスペイン大使館・領事館の最新情報と移民法専門家にご確認ください。